竿作り・修理の知識【溶剤】
各塗料にはその塗料に合った溶剤(薄め液・シンナー)が販売されています。
基本的には専用の物を使用したほうが間違いありませんが、あえて別の溶剤を使用することによって、より綺麗な塗装ができる場合もあります。
ただし、使い方は様々な為、基本的には自己責任の範囲で使用することとなります。
例えばエポキシに使用するシンナーとして、専用のシンナー以外に他社のエポキシ用シンナー・ラッカーシンナー・アルコールなども使用できる場合がありますが、全てにおいてそれが保証できる物ではありません。
実際に使用してみると、仕上がりに違いが出てくる場合が多くなります。
リターダーシンナーとは乾燥の遅いシンナーで、乾燥の早い一般的なラッカーシンナー(セルロースシンナー)などに添加することによって乾燥を遅らせることができます。
「カブリ現象」との関係性
乾燥を遅らせるとどうなるかというと、まずカブリを抑えることができます。
カブリ(白化・白濁現象)とは塗料が急速に揮発する事によっておきる「結露」が原因で起こる現象で、揮発を遅らせることによってその現象が起きにくい状態となります。
乾燥スピードとの関係性
また乾燥が遅くなるということは、塗面にて塗料が平滑になる時間が稼げるということになります。
仮に筆塗りで塗った場合、乾燥が早い状態ですと塗面が平滑になろうとしますが、平滑になる前に乾燥してしまうため、筆の跡がくっきり残ってしまいます。
乾燥が遅い状態ですと、筆の跡が徐々に平滑になる時間を稼げるので筆の跡が目立たなくすることができます。
エアブラシなどでの作業でも塗料が塗面についたとたんに乾燥してしまうような状態では綺麗なツヤはでません。
また釣竿など長いものを塗った際に、一度に塗ることができない為、分割して塗ることとなりますが、乾燥が早いと塗装と塗装のつなぎ目部分に塗料ミストによるザラツキが出来てしまいます。
乾燥が遅ければ平滑になる時間が稼げるので奇麗なツヤを得ることができ、塗装と塗装のつなぎ目部分も奇麗になじみザラツキもなくなります。
模型業界では事前にリターダーの添加されている「レベリング薄め液」といった物もあります。レベリングとは「平滑化」という意味で塗面が平滑にできる・・・といった溶剤です。平滑になりやすい塗料を「セルフレベリング(自己水平)性が高い塗料」といった表現をします。
代用できるシンナーは?
これとは別に元々乾燥の遅いシンナーもあります。塗装業者が使用しているようなシンナーで乾燥の違いをその時その時で選択して塗装することができます。乾燥が遅い為リターダーと同じ効果が得られますが、違いはその「溶解力」です。
リターダーシンナーにはそれほど塗料を溶かす溶解力がない為、単体での使用は基本的には難しいです。
塗料が綺麗に溶けないと綺麗な塗装は難しくなるので、このようなシンナーを使用することでより綺麗な塗装ができます。
弊社で扱っている溶剤では、ゼストの「夏用シンナー」がそれにあたります。
夏場の乾燥の早い時期でも綺麗な塗膜を得ることができ、こういった溶剤を使用することによって塗料のレベリング性能を上げることができます。
違う塗料の重ね塗りについて
注意する点
種類の違う塗料を塗り重ねる場合、基本は上塗りする塗料が下の塗料を侵さない物を使用します。
例えば水性塗料と油性塗料の場合、油性塗料の方が溶剤が強い為、水性塗料の上に油性塗料を塗ると水性塗料が溶けたす可能性が高くなります。
また硬化後の塗膜が強くなければ、上に塗った塗料の溶解力で塗膜が置かされる可能性が高くなります。
一例として塗膜が弱い、強いを分けると以下の通りになります。
A:塗膜が強い物
一液・二液ウレタン/エポキシ/うるし(人工)
B:塗膜が弱い物
クリヤー樹脂/蛍光塗料/セルロース
上記のAの上にBを塗ることは問題は起きませんが、逆は溶け出す可能性が高くなります。Aのウレタン・エポキシに関しては硬化後、溶剤に侵されることは無く、うるしも溶剤には非常に強い為、殆ど溶けることはありません。
Bの塗料は硬化後溶剤で拭くことにより溶解してしまう塗料です。
こうなると、Bの塗料の上にAの塗料は絶対に塗れないかというとそういうわけではありません。
塗れない、また塗りにくい状況としては筆塗りの場合です。
どのように塗ればいいの?
筆塗りの場合、直接塗膜面をこする為、下の塗料を「ふき取る」効果が働いてしまい影響が出やすくなります。こういう場合、エアブラシを使用することによって塗料流れを回避することが出来ます。
例えば着色を蛍光塗料で行い、上からウレタンクリヤーを塗りたい場合、着色した蛍光塗料の塗膜面にエアブラシで薄くクリヤーを吹き付けます。
この時いきなり厚塗りはせず、軽く吹き付けるのがコツです。薄く吹きつける事で下地塗料が溶け出すほどの量を付着させないようにします。
少し乾かし、またウレタンクリヤーを吹き付ける・・・これを場合によっては数回繰り返します。
これだけで艶を出す事も出来ますが、完全に硬化させた後、艶出しの本塗りをする為、多めにウレタンクリヤーを吹きつける事でクリヤー層を厚くすることができ、深みのある艶を得ることが出来ます。
ルアーメイキングで言うところの、いわゆる「色止め」作業になりますが、これを行った後は必ず完全に硬化させるために、丸1~3日は硬化時間を設けたい場合もあります。
特にルアーメイキング時に最終で「ドブ漬け」処理を行う場合にはしっかり硬化していない状況で行うと、色流れやしわ・ちじみの原因となるので注意が必要です。
溶剤・ツールクリーナーの商品ページへ
竿作り・修理の知識 TOPへ